抄録
国のe-Japan戦略で情報リテラシー強化の重要性が取り上げられたことにより、短期間でIT分野、特にメディア利用とITの操作に関する常識力は向上したようであるが、ここでいうリテラシーはどちらかといえば文系リテラシーであり、その裏ではIT機器の利便性向上が徹底的に進んだために、ITの仕組みを知らなくても使えればよいという認識が出来上がり、ITの時代という状況認識の裏で逆に技術リテラシーの低下が進んでいる。大学入学者の学科志望動向を見ても、21世紀に入ってから電気電子系、情報通信系学部の競争率低下傾向が見えており、産業的にみたエレクトロニクス、情報の活況とは裏腹にその分野を志す次世代人材が長期的には不足することが懸念されている。将来の日本の産業構造、社会構造のあり方を踏まえて、大学が社会に送り出すべき人材をどう捕らえるか、社会の常識の構築に関して大学は何ができるかについて考える。