抄録
本研究は,東日本大震災前後の防災教育に着目し,自然災害等の取扱いについて,科学技術を社会的文脈から捉えるSTS教育の観点から考察した。東日本大震災後の科学教育の検討において,震災発生時期の教育界の時代的な背景を無視することができず,発生の翌月から始まった「生きる力」を謳った新しい学習指導要領の展開だけでなく,いわゆる第三の教育改革の観点からも捉え直す必要があった。さらに,国際的な動向としての「国連持続可能な開発のための教育の10年」,国連国際防災戦略としての「兵庫行動枠組」も踏まえながら,東日本大震災及びその後の防災教育とも関連した科学教育の在り方を模索した。その結果,OECD生徒の到達度調査,ESD(持続発展教育)など,これからの教育で育成が期待されている力は防災教育のねらいと一致することが明らかとなり,科学技術を社会的文脈から捉える防災教育の展開の必要性が明確になった。