主催: 一般社団法人 日本科学教育学会
会議名: 日本科学教育学会第47回年会
回次: 47
開催地: 愛媛大学
開催日: 2023/09/18 - 2023/09/20
本稿は,数学的問題解決過程の複雑な様相を概念使用の観点から明らかにすることを試みた探索的研究の報告である.R. Brandomによって提唱された推論主義と呼ばれる現代哲学の中から,特に「分節化」のアイディアに注目し,生徒達の問題解決過程の振り返りについての記述を,計量テキスト分析の手法を利用して分析する.国立大学附属高等学校2年生62名の記述を分析した結果,生徒達が問題場面を特徴付ける際に用いる表現の差異が,問題解決過程の差異となっている可能性が指摘された.具体的には,問題場面を円の図で表現する場合と「円」という語で表現する場合の違いや,問題場面をベクトルの内積の式で表現する場合と「内積」という語で表現する場合の違いが示唆された.観察者から見て同じ意味の表現でも,生徒達にとっては違う役割の「概念」の使用であることが伺われる.