抄録
都市環境に適応した野生のキツネは「アーバンフォックス(都市ギツネ)」と呼ばれ,彼らと人間との軋轢は年々多様化・深刻化している.キツネから人への「エキノコックス症」の感染リスクの増大と,餌付けによるキツネの「人馴れ」はその代表格である.こうしたキツネ問題に対して,行政主導での包括的な対策が求められているものの,リスク評価の難しさからいまだ実現に至っていない.都市部でのキツネとの「共生」をめざしたキツネ管理の実現には,行政システムの整備に加えて,市民の主体的な参画が不可欠である.そこで,野生動物管理に対する市民の当事者意識の涵養を目的として,札幌市内の都市公園との協働で,獣害対策教育のイベントを5回にわたり実施した.自由記述の感想から,本イベントが,参加者自身の自然観を再解釈するきっかけになったり,知識の習得だけでなく互いの不安を共有しあう場として機能した可能性があることがわかった.