抄録
近代ドイツのヘルバルト学派に属したバイヤーは、『生活共存体としての村の池』(1885年刊)にみられるユンゲの総合的な理科教育の論を、次の3つの観点から検討している。①多方面興味の喚起、②教材の選択・配列の原理、③教授内容の単元化。ヘルバルト学派の教育論の立場からみて、ユンゲの論は、いずれの観点をも満足させるものではなかった。バイヤーが提起した総合的な理科教育の論こそがふさわしいものであった。ユンゲが同学派の教育論を理論的根拠としていない以上、このことは当然導かれる結論である。しかし、バイヤーが検討した過程や内容から、二人の理科教育論の接点が一部にあったことがうかがえる。