学習指導要領において,高等学校数学科の目標は「数学的活動を通して,数学における基本的な概念や原理・法則の体系的な理解を深め,事象を数学的に考察し表現する能力を高め,創造性の基礎を培うとともに,数学のよさを認識し,それらを積極的に活用して数学的論拠に基づいて判断する態度を育てる」(文部科学省,2008)とされた。その目標の改善点の1つに,「理解」を「体系的な理解」に変更したことがある。数学を様々な場面で活用できるようにするためには,知識を体系的に理解しておくことが必要である。今回の改訂ではこのことをこれまで以上に重視し,「体系的な理解」とした。体系的とは,「まとまりの中に組み込まれている」と定義される。断片的に知識を身につけるのではなく,既習の内容として身につけている既有知識と新しい学習を関連づけることで体系的な理解をすることを本研究の目的とする。5社の教科書を分析して,既有知識に基づいたとき,加法定理の証明法を3つのタイプに分類した。