「大学教育の国際化」という文脈で,大学の授業を英語で行うことが求められるようになってきているが,「教授学習言語を英語化する」とはいったい「具体的にはどのようなことなのか」を問う研究は多くない.本稿では,「英語と日本語との関係性」という視点から,大学教育の教授学習言語問題を見直す第一歩として,日本の理学系高等教育の創成期での「関係性」を探ることを試みる.具体的には,先駆けの一つであった札幌農学校を事例として取り上げ,そこでの教授学習言語の実情(創設期の外国人教師による英語の講義が,卒業生を中心とした日本人教師になって,講義が日本語化する状況)を受講ノートという史料に基づいて解読し,「英語と日本語との関係性」について,問題点を整理する.