2021 年 35 巻 5 号 p. 69-74
本研究では,教職課程学生のICT活用指導力の現状を把握するため,文部科学省「教員のICT活用指導力チェックリスト」を用いて,2020年度教職課程4年生を対象に調査を行った.2017年実施の中学高校教員対象の調査結果と比較したところ,ICT活用指導力に肯定的な回答をした割合は学生の方が高かった.それは,大学での教育活動においてMoodle,WebClass等のLMSに日常的に触れているためや,各科目・実習・卒業研究等でのインターネット等を利用した調査,ワープロ・表計算ソフトを用いたレポートの作成,プレゼンテーションソフトによる発表等を多く経験しているためであると考えられる.さらに,4年次(2020年度)に新型コロナウィルス感染症対策によるオンデマンド・オンライン形式の授業を経験したことも,肯定的な回答をした学生が多かった一因と考えられる.一方で,学生が経験に乏しい校務分掌業務や保護者・地域との連携における情報機器の活用(A-2),ICTの活用以前に授業運営力や指導力が問われる生徒の意見・考え方・作品等の共有におけるICT活用指導力(B-2)については,中学高校教員に比べ学生の方が,否定的な回答の割合が高かった.