2022 年 37 巻 2 号 p. 25-28
教育学部の実験科目において,市販の乾燥ウミホタルを出発材料としてDNA粗抽出液を調製し,ミトコンドリアDNAにコードされる遺伝子のPCR実験を指導した.受講生が増幅した遺伝子のうちCOII遺伝子について結果を確認したところ,乾燥ウミホタルには部分的に塩基の異なる個体が混在していることが推測された.そこで,あらためて16個体の乾燥ウミホタルについてDNA粗抽出液を調製し,COII遺伝子の全長(702bp)をPCR増幅してシーケンシングし塩基配列を比較した.その結果,塩基配列が完全に一致したのは5個体であり,他の11個体についてはどの個体も1ヶ所以上の塩基置換がみとめられた(計18ヶ所).その内の2ヶ所についてはアミノ酸の変化を伴う置換であった.乾燥ウミホタルはPCR法や遺伝子の突然変異について学ぶ教材として有用かもしれない.