抄録
埼玉県戸田市上戸田地区でボーリングコアGS-TKT-1を掘削し,堆積相・貝化石・物性・元素分析結果に基づいて沖積層の堆積環境変遷を明らかにした.また放射性炭素年代に基づき既存ボーリングデータと比較した.
GS-TKT-1で観察された堆積物は5つのユニットに分けられる.ユニット1(更新統下総層群),ユニット2(礫質河川堆積物),ユニット3(砂質河川~塩性湿地堆積物),ユニット4(内湾~デルタフロント堆積物),ユニット5(砂質河川堆積物)である.ユニット2より上位は沖積層に相当し,一回の海進(ユニット2-3)および海退(ユニット4-5)を示唆する.堆積年代はユニット2が10000calyBP以前,ユニット3が10000-9000calyBP, ユニット4が9000-5000calyBP, ユニット5が5000calyBP~現在である.
既存ボーリングデータに基づく断面図からは,礫質河川堆積物と砂質河川堆積物は埋没谷の中軸部に,塩性湿地堆積物と内湾堆積物の下部は中軸部および南側の埋没段丘面に分布し,内湾堆積物の上部,デルタフロント堆積物,河川堆積物は埋没谷全域に分布することがわかった.