堆積学研究
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総説
津波石研究の課題と展望
—防災に活用できるレベルにまで研究を進展させるために—
後藤 和久
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2009 年 68 巻 1 号 p. 3-11

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抄録

我々は,2004年インド洋大津波によって運ばれたタイ・パカラン岬の津波石を調べ,2007年にSedimentary Geology誌で報告した.そして,この論文は2009年に日本堆積学会第一回論文賞の受賞論文となった.本稿では,この論文の内容に加えて,津波石の既往研究を紹介し,高波起源の巨礫とどう識別するか,どうやって防災に役立つレベルにまで研究を進めるかを議論する.従来,津波石の認定には,津波と高波の波高の違いに着目した水理学的方法が用いられてきたが,実用に耐えるものではない.それに対し著者らは,両者は移動距離の違いによって識別可能だと考えている.これは,津波の周期が長く,巨礫をより内陸まで運搬できると考えられるからであり,高波による巨礫移動限界線を明らかにできれば,津波石を認定する基準になると考えられる.さらに,数値計算技術を用いることで,津波石の分布から津波の局所波高と周期を推定できる可能性があることがわかってきた.

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© 2009 日本堆積学会
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