堆積学研究
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論説
長野県,木崎湖の表層における陸源性砕屑物の粒度分布と堆積過程
伊藤 拓馬公文 富士夫
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2012 年 71 巻 1 号 p. 3-13

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抄録

木崎湖の表層堆積物について,全岩試料の比重計法による粒度分析の結果は,6 φよりも細粒な堆積物でそれに含まれる珪藻の殻を受けることがこの研究により示された.したがって,細粒な陸源性砕屑物の堆積過程を明らかにするためには,粒度分析を行う際に全岩試料中の陸源性砕屑物を抽出する必要があることが具体的に示された.レーザー回折散乱法による陸源性砕屑物の粒度分析結果から,木崎湖の表層堆積物は4つのグループに区分された.グループ I とグループ II は粘土質シルトに,グループ III は砂質シルトおよび砂-シルト-泥に,グループ IV はシルト質砂から砂に分類され,各々の分布域は沖合帯,遷移帯,沿岸帯にほぼ相当する.グループ III と IV の堆積物の境界線は,河口部では沖合に張り出しているため,木崎湖では洪水イベントによる堆積作用が重要な役割を担っていると判断される.沿岸帯は,沿岸に分布する堆積物が波浪の影響で洗われた砂質および礫質の残留物からなる.また,通常時やイベント時の波浪によって沿岸帯から巻き上げられた細粒な砕屑物や,洪水イベントによって河川水から懸濁運搬される.それは,沖合へ運搬され,シルトサイズの懸濁物が堆積した場所が遷移帯となる.さらに,より細粒な懸濁物はさらに浮遊を続け,湖流により運搬されて堆積したものが沖合帯を構成すると考えられる.

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© 2012 日本堆積学会
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