抄録
紀伊半島四万十帯の白亜系寺杣層,古第三系音無川付加シーケンスの砂岩組成を検討した.寺杣層では後背地でのルーフィングに伴い,下部から上位へジルコンとザクロ石に富み,緑レン石·チタナイト·褐レン石を伴う長石質ワッケから,自形ジルコンに富む石質ワッケへと急変する.ザクロ石は下部では様々なタイプからなるが,上部では高圧型やグランダイトは急減し低圧型が増加する.一方,音無川付加シーケンスでは,アンルーフィングにより,下部から上部にむけて緑褐色普通角閃石を伴い自形ジルコンに富む石質ワッケから,緑レン石·チタナイト·褐レン石に富む長石質アレナイトへと変化する.ザクロ石組成は上位に向けて中圧型は減少,代わって低圧型が増加,最上部ではグランダイトが出現する.後背地におけるルーフィングやアンルーフィングは自形ジルコン,褐レン石,低圧型·高圧型やグランダイト型ザクロ石等の消長から推定することが可能である.