2020 年 79 巻 1 号 p. 3-14
東京低地の地下には最終氷期に形成された関東地方最大の埋没谷がある.この埋没谷を埋める沖積層の層序·形成プロセスを明らかにするため,関東平野の陸上から掘削可能でもっとも埋没谷が深い江東区若洲で85 mの沖積層ボーリング調査GS-KWS-1を行った.
GS-KWS-1コアは下位から更新統,沖積層,埋立土からなる.沖積層は下位から5つのユニットに分けられ,それぞれ礫質河川,砂質河川(1万5千年前〜1万1千年前),エスチュアリーもしくは海進期ラグ,プロデルタ(4千年前〜1千年前),デルタフロント(1千年前以降)の堆積物からなる.
1万年前〜4千年前頃の堆積物はGS-KWS-1地点では欠けており,堆積時間間隙が認められる.プロデルタ〜デルタフロント堆積物の年代は海側に向かって新しくなっており,デルタフロントは2.7 km/千年の速度で前進していたことがわかった.