土と微生物
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イネと土壌微生物群との共生によるN_2固定(土壌微生物とバイオテクノロジー)
太田 光輝
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1985 年 27 巻 p. 17-27

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抄録

農業におけるバイオテクノロジーの利用分野として,イネ科作物の窒素固定研究が注目されている。国立遺伝学研究所ではアセチレン還元法を用いて窒素固定をするイネを発見した。イネ属の色々な種や系統間には窒素固定能に変異がみられ,イネ側にも窒素固定菌との共生にかかわる遺伝子群があることがわかった。そしてこれらの遺伝子を組み合せることによって高い窒素固定能を持つイネが作れる可能性を示した。イネ根圏からは種々の窒素固定細菌が分離され,感染実験によってKlebsiella oxytoca (NG13)と、Azospirillum lipoferum (COC8)がイネ根圏で高い活性を活性を示した。また,NG13菌にK. pneumoniaeのnif遺伝子を持つプラスミドpRD1を導入することによって,元の株より3倍の活性を持つ改良菌NG1325が作られている。COC8菌など5種の窒素固定菌からプラスミドが見つかっている。静岡農試ではイネの窒素固定の実用化研究が行われている。将来は,植物細胞自体に直接窒素固定遺伝子を導入するという植物遺伝子工学への発展が期待される。

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