土と微生物
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土壌アメーバによる植物病原菌の捕食(土壌微生物とバイオテクノロジー)
本間 善久
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1985 年 27 巻 p. 29-37

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抄録

近年,土壌アメーバが土壌病菌を捕食して死滅させる現象が見つかり,土壌原生動物による病原菌の拮抗現象として興味が持たれる一方,土壌病害の生物的防除に向けて注目されている。その種類,食菌行動,生態などについての研究の現状を紹介し,生物的防除への可能性を探った。1)土壌病菌を捕食するアメーバは10数種知られており,主に栄養体の仮足の形態によって葉状仮足綱,糸状仮足綱,無子実体綱,顆粒性網状仮足綱に分けられ,広範囲の分類群に属している。2)食菌性アメーバが病原菌を捕食する過程は,菌体に到達→菌体を包囲→原形質吸収の順に進行し,いずれも病原菌の細胞壁に0.1〜5.0μmの丸い穴(食痕)を生じる特徴がある。食菌行動,食菌時間はアメーバの種類によって異なる。3)食菌性アメーバはcosmopolitanであり,世界的に広く分布する。我が国においても,北海道から沖縄まで,作物の種類,栽培形態,土性などに関係なく広範囲の土壌に棲息する。土壌中のアメーバ数は表層部に多く,土壌1g当たり3〜70個体である。4)土壌中における食菌性アメーバの活性は,マトリックポテンシャルの-10〜-250mbの比較的狭い範囲に限られる。塩濃度も重要な要因であり,EC1,500μmho/cm以上,浸透ポテンシャル-800mb以下では活性が見られない。土壌pH4.8〜8.3の範囲で活性が見られ,中性土壌で活性が高く,酸性土壌で低くなる。5)コムギ立枯病やアボガドの疫病などの発病抑止土壌で食菌性アメーバの活性が高い。発病抑止土壌のコムギ根圏でアメーバ数が多く,立枯病の感染阻止に重要な役割をもっと考えられている。6)食菌性アメーバが,土壌病菌の根への定着や侵入前の外生的生育を阻止し,発病を顕著に抑制し,植物の生育を良好にする実験例も見られる。

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