圧力が細菌におよぼす影響についてこれまでの研究を概観するとともに,最大1000気圧までの耐圧能力を持つ高圧培養装置の試作を行い予備的培養結果について紹介した。非高圧耐性の陸上細菌を使用して得られた既往結果によると,圧力による細菌の生育阻害はタンパク合成の場であるリボゾームが圧力により機能障害が起るためであることが分子レベルでの研究で明らかにされている。しかし,高圧環境下とくに深海底では1000気圧下でも生育する細菌が存在している。これらの細菌の簡便な単離技法の開発と合わせてobligate barophileの耐圧機構については今後に残された重要課題と考える。試作した高圧培養装置を使った実験によると,試料中の高圧耐性菌数をMPN値で評価する点において,および既知の細菌の高圧耐性能を評価する点において,試作した高圧培養装置は利点を有することが判明した。