土と微生物
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土壌中の微生物数量および酵素活性におよぼす塩素化有機溶媒の影響
金沢 晋二郎Zdenek FILIP
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1985 年 27 巻 p. 39-49

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抄録

土壌中の微生物数量およびその活性におよぼす各種塩素化有機溶媒の影響を明らかにするために,生産量および使用量ともに最も多いトリクロロエチレン,テトラクロロエチレンおよびジクロロメタンを選んだ。それらの溶媒を乾土100g当り10, 100, 1000μg添加し,微生物バイオマスとしてATP含量,微生物フロラとして好気性および嫌気細菌,好気性胞子形成細菌,放線菌および糸状菌数,酵素活性としてプロティナーゼ,フォスファターゼ,β-グルコシダーゼおよびβ-アセチルグルコサミニダーゼ活性等に与える影響を経時的に調べた。得られた結果を要約すれば,次のとおりである。1)土壌中の微生物バイオマス(ATP含量)は,100μg/100g乾土(1.0ppm)の各溶媒の添加では1〜2週の間わずかに減少する程度であったが,1000μgの添加ではいずれの溶媒とも2か月間のインキュベーション期間中対照区に比べて著しく少なくなった。2)好気性細菌数は,1000μgのテトラクロロエチレンの添加で刺激を受け菌数を著しく増大させたが,同量の他の溶媒では著しい生育阻害が認められた。一方,好気性胞子形成細菌は,各溶媒ともほとんど影響を受けなかった。放線菌は,1000μgの各溶媒で著しく菌数を減少させた。糸状菌は他の微生物に比べて最も感受性が高く,10μgの添加でもその菌数を減少させた。その変動はATP含量のそれと類似していた。3)各酵素活性は,10μgの各溶媒の添加では,影響を受けなかった。100μgの各溶媒の添加ではβ-グルコシダーゼ,β-アセチルグルコサミニダーゼおよびプロティナーゼ活性等は,28日目頃まで多少とも影響を受けるが,2か月後には回復し対照区と同程度の活性を示した。しかしながら,1000μgの各溶媒の添加では,各酵素活性とも大きく影響を受け,その活性を低下させた。

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