2011 年 65 巻 2 号 p. 94-99
冬期湛水・有機栽培水田では,湛水期間の長期化,農薬の不使用,易分解性有機物の施用によってユリミミズとエラミミズを主体としたイトミミズ類が増加すると考えられた。水田のイトミミズ類は河川や湖沼と異なり,人為的な影響(水管理)によって繁殖時期が制限されていることが示唆された。イトミミズ類の土壌摂食・排泄・移動によって,水田土壌表層は撹拌され,土壌養分の可給性と田面水への養分放出が増加する。イトミミズ類のこれらの作用は水田の物質循環,水稲生産性,水田における生物多様性に影響すると考えられ,物質循環や生物多様性を重視した環境保全型農業を進めるという観点から,水田でのイトミミズ類の生態と機能に関する研究の重要性は増してくると考えられた。