土と微生物
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過剰な養分供給に対する土壌分解系と菌類の応答: カワウ営巣林における事例
大園 享司
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2018 年 72 巻 2 号 p. 73-78

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抄録

 カワウの営巣とフンによる過剰な養分供給を受けているヒノキ人工林を対象に,リター分解に関与する菌類群集の変化,菌類の生理生態的な応答,リター分解プロセスの変化を実証的に明らかにした。営巣林では,カワウの営巣がみられない非営巣林に比べて,落葉・落枝に含まれる菌糸量が減少し,菌類の種数,多様度指数,均衡度が増加した。営巣林では種組成も大きく変化し,特に営巣中の林分ではリグニン分解菌が減少し糞生菌が増加していた。フンを含む寒天培地での培養試験により,カワウのフンは培養菌株の菌糸成長とリグニン分解活性を抑制することが示された。野外で採取した菌類子実体の窒素安定同位体比の測定により,営巣林では菌類がフン由来の窒素を吸収し利用していることがわかった。リターバッグ法による2 年間の分解実験により,営巣林では非営巣林に比べて,落葉・落枝の分解が遅くなること,この分解速度の低下は見かけ上のリグニン分解の抑制により引き起こされることと,フン由来の窒素が落葉・落枝に不動化されていることがわかった。以上のデータと数理モデルにより,営巣林の林床におけるリターと窒素の長期的な集積のパターンを予測した。

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