土と微生物
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土壌由来の温室効果ガス削減に向けた市民科学による微生物探索
大久保 智司 青木 裕一
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 77 巻 1 号 p. 34-39

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抄録

本論文では2021 年11 月より開始した市民参加型の研究プロジェクト「地球冷却微生物を探せ」(https://dsoil.jp/soil-ina-bottle/)を紹介する。近年,研究者と市民が協調して科学研究に取り組む「市民科学」が,立場や背景知識の垣根を超えて社会を共創するための取り組みとして着目され,国内でも急速に普及し始めている。主要な温室効果ガスの1 つである一酸化二窒素(N2O)は農地土壌から多く発生するが,本プロジェクトではそれを削減するため高いN2O 消去能力をもった微生物(= 地球冷却微生物)を見つけ出すことを目的とした。具体的には参加者の身近にある土壌と空気を使って実験をしてもらい,試料を研究機関に集約してN2O 濃度や土壌微生物叢を分析する。得られたデータを手がかりに土壌の中から地球冷却微生物を見つけ出し,N2O 削減のための微生物資材開発を目指す。これまでに日本全国から多数の試料が集まり,それらの土のN2O の放出・吸収速度を測定・比較した。また,土の中に存在する微生物の種類や多様性につ いても明らかになってきたのでデータの解析を進めている。

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