抄録
近年,食料供給の不安定化や持続可能な農業への関心の高まりにより,植物病害の防除は一層重要な課題となっている。その中でも,土壌中に長期間残存して作物に甚大な被害をもたらす土壌伝染性の植物病原菌は,防除が極めて難しい。本稿では,代表的な3種類の病原菌,すなわちVerticillium属菌(半身萎凋病など),Sclerotinia sclerotiorum(菌核病など),Sclerotium cepivorum(黒腐菌核病)に焦点を当て,それぞれの生態的特徴と感染戦略を紹介する。これらの病原菌は,土壌・地上部・空中を巧みに利用して感染範囲を拡大し,農業生産に深刻な影響を与えている。それぞれの病原菌の生存戦略を理解し,科学的根拠に基づく防除方法を構築することが,今まさに求められている。