外科と代謝・栄養
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教育講演
オートファジー:その異常と疾患
小松 雅明
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2017 年 51 巻 3 号 p. 45

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抄録

 オートファジーは細胞外環境に応答して出現した隔離膜が伸長して細胞質成分をランダムに取り囲んだ脂質二重膜構造体(オートファゴソーム)が形成される過程と、生じたオートファゴソームにリソソームが融合して内容物を消化する過程から構成されている。この分解系は、オートファゴソーム内に取り込まれた細胞内タンパク質をアミノ酸にまで分解することができる基本的に非選択的な大規模分解系であり、新しい膜形成と連動している巧妙かつ複雑な細胞内分解機構である。このシステムは、栄養飢餓により激しく誘導されることから、自己タンパク質の分解によるアミノ酸供給を介した究極の生存戦略と考えられる。一方、我々は高等動物においては栄養が豊富な状態においてもオートファジーは恒常的に起こっていること、この栄養条件にかかわらずに起こる恒常的なオートファジーによるタンパク質や オルガネラの品質管理が、特に老廃物の除去が生存に必須と考えられる非分裂細胞において重要な役割を担うことを明らかにしてきた。また、非選択的分解経路と考えられてきたオートファジーに選択的なタンパク質識別機構があることも判明した。本講演では、高等動物におけるオートファジーの生理機能およびヒト疾患、特に肝細胞がんとの関連を紹介したい。

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