外科と代謝・栄養
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原  著(基礎研究)
ラットを用いた中心静脈栄養(TPN)輸液中の遊離鉄の有効性と安全性に関する検討
原田 大輔田中 誠中井 輝加藤 ゆい澤本 修桑原 孝
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2017 年 51 巻 6 号 p. 355-367

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抄録

 投与される鉄の約80%が遊離鉄である中心静脈栄養(TPN)輸液をラットに21 日間投与して,その有効性と安全性について検討した.また,微量元素製剤を側管から同時投与したコロイド鉄群と比較検討した.その結果,造血の維持は遊離鉄群およびコロイド鉄群で同様に認められ,鉄補給効果において遊離鉄が劣ることはないと考えられた.トランスフェリン(Tf)飽和度は,遊離鉄群が有意に高値となったものの最高35%であった.また,尿中への鉄排泄はほとんどなく,投与された遊離鉄は血中に十分ある Tf にすみやかに結合したものと考えられた.血清ヘプシジン-25 濃度は,遊離鉄群で有意に高値を示したが,鉄補給効果に問題はなかったことより生理的な範囲での反応と考えられた.組織中鉄濃度および病理組織評価では,異常な組織沈着や障害を示す所見はなかった.酸化ストレス指標にも違いはみられなかった.以上,TPN による遊離鉄投与は,有効性および安全性に問題はないものと考えられた.

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© 2017 日本外科代謝栄養学会
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