外科と代謝・栄養
Online ISSN : 2187-5154
Print ISSN : 0389-5564
ISSN-L : 0389-5564
体液代謝管理研究会・日本輸血細胞治療学会ジョイントシンポジウム
BS-2 エビデンスに基づいたアルブミン製剤の適正使用について
安村 敏
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 52 巻 3 号 p. 62

詳細
抄録

 静脈内投与されたアルブミンは速やかに血管内に均一に拡散し、数日で血管外プールに分布するため最終的に約60%は血管外へ移動する。血管内でアルブミンは約6nmでマイナスに荷電しているが、血管内のグリコサミノグリカンを基本骨格とするグリコカリックスも正常では強く負に荷電しているため、毛細血管から間質へのアルブミンの移動を制限している。しかし、大手術、外傷やショックなどの侵襲時にはグリコカリックスが荒廃し、アルブミンの血管外漏出率は増大するため、実臨床では期待値に至らないことが多い。アルブミンの測定法には、BCG法と改良型BCP法の2つが用いられているが、BCG法はグロブリンとも反応するため、特異性に問題があり、改良型BCP法より高値となる。改良型BCP法に0.3g/dLを加えた値がBCG法の測定値と近似する。国内の採用は改良型BCP法が約65%、BCG法が約25%であり、自施設がどの測定法を使用しているか把握しておく必要がある。また、2000年以降に報告された大規模の比較対照試験(SAFE study、ALBIOS study)でも測定方法の記載がなく、科学的にコンセンサスが得られたトリガー値は存在しないと判断される。アルブミン投与の有用性を評価するための臨床研究は多いが、救命率、入院日数などの重要評価項目で、アルブミン投与の優位性は示されていない。出血性ショック、重症敗血症、重症熱傷ではアルブミンを用いても入院期間や死亡率などを改善せず、特に脳虚血(頭部外傷)ではアルブミン使用で死亡率が有意に増加する。一方、肝硬変に伴う腹水やそれに伴う合併症、凝固因子の補充を必要としない治療的血漿交換療法では、エビデンスレベルの高い臨床効果が示されている。また、他の輸液製剤での代替が困難な場合には、アルブミンを使用すべきである。一方、投与されたアルブミンは体内でほとんどは熱源として消費されてしまうため、蛋白質の再生成の利用率が極めて低い。経静脈栄養中の集中治療室入院患者における低アルブミン血症に対して、アルブミン製剤を投与しても合併症や死亡率を改善しない。また、低蛋白血症を伴う末期患者に対してアルブミン投与しても予後の改善はなく、炎症性サイトカイン(IFN-γ、TNF-αなど)の産生を抑制し、感染症の頻度を増加させる可能性がある。新しいエビデンスに則ってアルブミン使用の適応となる病態について理解し、適正使用を推進することが必要である。

著者関連情報
© 2018 日本外科代謝栄養学会
前の記事 次の記事
feedback
Top