外科と代謝・栄養
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体液代謝管理研究会・日本輸血細胞治療学会ジョイントシンポジウム
BS-3 ヒドロキシエチルスターチはアルブミンの代替となり得るか
鵜澤 康二牛山 明
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2019 年 53 巻 3 号 p. 59

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抄録
 1950年代の南北朝鮮戦争での人工膠質液の投与から多くの膠質液が投与される時代に突入した。その後様々な研究が報告され、現在では重症患者に対する人工膠質液投与は、制限されている。果たしてこれは、正しいのであろうか。重症患者には、アルブミン製剤を投与した方が良いのであろうか。私が研修医の頃、術後に患者が低アルブミン血症に陥ると、すぐにアルブミン製剤が投与されていた。しかし、今の臨床現場では、アルブミンの適応が症例ごとに議論され、慎重に投与されている。日本における年間総使用量は、1999年に2268000L、2005年に1654000 L、2015年には1254000Lと年々減少している。2017年3月に「血液製剤の使用指針」が改定された。この中で、周術期はアルブミンの生合成が促進されており、外部からのアルブミン投与で内部生合成を低下させる可能性があることに言及している。さらに循環血漿量確保の目的で、細胞外液や人工膠質液よりアルブミンが有利であるとするエビデンスは乏しいとも述べられている。アルブミン値が低いこと、血圧が不安定であるという理由のみで、アルブミンを投与することは避けなければならない。一方でヒドロキシエチルスターチ(HES)製剤には、腎機能障害や凝固障害などの合併症が報告されており、敗血症患者での使用は控えられている。重症病態では、血管透過性亢進や臓器浮腫が発生する。この調整を行うのが、内皮細胞上層に存在するグリコカリックス(GCX)であり、近年注目されている。GCXは、NOの合成や血管透過性の調整により、内皮細胞機能を保護し、電荷的にマイナスに帯電して、アルブミンの血管外漏出防止にも役立っている。我々は、重症病態下のGCXに注目し、マウス大量出血モデルへの輸液蘇生による影響を研究している。マウスの大量出血モデルを使用し、重症病態の末梢循環を観察した。このモデルに各種輸液(NS vs ALB vs VOL)を投与した結果、ALBとVOLでGCX障害(厚みやsyndecan-1の測定)が有意に低かった。さらに血管透過性に関しては、HES130が最も効果的であり、HES製剤が血管内壁に局在しており、GCXに対して保護的な作用がある可能性が示唆された。本シンポジウムでは、HES130の新しい輸液戦略の可能性をお示しできたら幸いである。
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© 2019 日本外科代謝栄養学会
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