外科と代謝・栄養
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特集「がんに対する糖質制限食治療の可能性」
新規疾病発症モデルから期待する糖質制限食のmulti‐morbidity への有効性
山田 悟
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2019 年 53 巻 5 号 p. 191-200

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抄録
2018年,Ludwigらは新たな多疾病罹患モデルを提唱した.既存の①エネルギー摂取過剰→②内臓脂肪蓄積→③インスリン抵抗性→④高インスリン血症→⑤高血糖という流れで糖尿病は発症し,⑤高血糖と並列の関係で⑥脂質異常症や⑦高血圧症もあってメタボリックシンドロームを構成し,その下流に⑧動脈硬化症や⑨がんもあるという考えを否定し,①糖質摂取過剰→②食後高血糖→③遅延過剰インスリン分泌(高インスリン血症)→④A内臓脂肪蓄積および④B反応性低血糖など血液エネルギー基質不足→⑤飢餓感→⑥食べ過ぎ(エネルギー摂取過剰)という流れがあるとしたのである.もちろん,④A内臓脂肪蓄積の下流にインスリン抵抗性,脂質異常症,高血圧症,動脈硬化症,がんが来るのはいうまでもない.高血糖(糖質過剰)も肥満(エネルギー過剰)もがんの危険因子である中で,過度の体重減少を避けるがん対策として糖質制限食への期待は妥当である.
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© 2019 日本外科代謝栄養学会
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