外科と代謝・栄養
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53 巻, 5 号
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特集「がんに対する糖質制限食治療の可能性」
  • 鷲澤 尚宏, 古田 雅
    2019 年 53 巻 5 号 p. 185-189
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー
  • 山田 悟
    2019 年 53 巻 5 号 p. 191-200
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー
    2018年,Ludwigらは新たな多疾病罹患モデルを提唱した.既存の①エネルギー摂取過剰→②内臓脂肪蓄積→③インスリン抵抗性→④高インスリン血症→⑤高血糖という流れで糖尿病は発症し,⑤高血糖と並列の関係で⑥脂質異常症や⑦高血圧症もあってメタボリックシンドロームを構成し,その下流に⑧動脈硬化症や⑨がんもあるという考えを否定し,①糖質摂取過剰→②食後高血糖→③遅延過剰インスリン分泌(高インスリン血症)→④A内臓脂肪蓄積および④B反応性低血糖など血液エネルギー基質不足→⑤飢餓感→⑥食べ過ぎ(エネルギー摂取過剰)という流れがあるとしたのである.もちろん,④A内臓脂肪蓄積の下流にインスリン抵抗性,脂質異常症,高血圧症,動脈硬化症,がんが来るのはいうまでもない.高血糖(糖質過剰)も肥満(エネルギー過剰)もがんの危険因子である中で,過度の体重減少を避けるがん対策として糖質制限食への期待は妥当である.
  • 古川 健司, 桂川 秀雄, 重松 恭祐, 岩瀬 芳江, 三上 和歌子, 亀田 孝子
    2019 年 53 巻 5 号 p. 201-206
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー
     がん細胞では,グルコースから乳酸が作られ,好気的呼吸と嫌気的呼吸(解糖)の両方が使われている.さらに,好気的条件でも解糖系の抑制がかからないというWarburg効果は,正常細胞とは大きく異なる性質の1つとされてきた.また,がん細胞が増殖するには,細胞内へのブドウ糖の取り込みを行うグルコース・トランスポーター(GLUT)というタンパク質を増やし,莫大なエネルギー産生と核酸や細胞膜の合成が必要であるため,がんの栄養療法としては,ケトン食(糖質制限)が有効となる可能性がある.  
     欧米では,ステージ4の進行がん患者に対し,ケトン食の有効性の臨床研究がなされているが,食事療法単独では,時間の経過とともにがんが増悪し,がんのコントロールは不良である.そのため,われわれはケトン食と化学療法の併用療法を1年間行い,その後2年フォローを行った.今回,われわれの研究成果を中心に,進行再発癌に対するケトン食の可能性について報告する.
  • 萩原 圭祐, 梶本 勝文, 中田 英之, 神吉 秀明, 竹内 麻里子, 斎藤 仁美, 中野 真依
    2019 年 53 巻 5 号 p. 207-215
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー
     われわれは,大阪大学ゲノム審査委員会の承認を得て,2013年1月より,日本の基幹病院において先駆けて,癌患者に対するケトン食の有用性と安全性の検討を開始し,その結果を,報告してきた.対象は,臨床病期Stage IV,PS0‐2,経口摂取可能な患者とし,他の癌治療の併用は可能とした.ケトン食は,同意取得後,管理栄養士が指導し,最初の1週間は糖質10g/日,2週~3カ月では,糖質20g/日以下,3カ月以降は,糖質30g/日以下とした.標準体重あたり30kcalを目安に開始し,エネルギー補給に際しては,MCTオイル,ケトンフォーミュラを使用した.導入3カ月後でのPET‐CTによる評価を主要評価項目とし,導入12カ月後での生存率の評価を副次評価項目とした.2018年12月現在55例の同意を取得し,現在,その結果を解析中である.癌ケトン食療法は,確かなエビデンスを構築していく段階に移行したと思われる.そのための課題や,われわれの取り組みについて紹介する.
  • 田部井 功
    2019 年 53 巻 5 号 p. 217-224
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー
     乳癌の治療では集学的な全身治療がmultimodalに行われている.化学(抗癌剤)療法の有効性は,その奏功率はもとより副作用の軽減およびコントロールによる継続性は治療成功への重要なカギとなる.糖質制限食療法(Ketogenic Diet:以下KD)による補助療法は抗癌剤による副作用を軽減し,治療の完遂率を向上させたとする報告がある1).乳癌患者における危険リスク因子に肥満や高BMIが指摘されている2)~6).これはいわゆるcachexia状態を呈する食道癌や膵臓癌などの担癌体と栄養代謝病態が異なることを示唆し,異なる栄養管理療法の必要性を示すものと考える7)~10).ゆえに乳癌患者は従来のがん患者に対する補充的栄養療法とは違う別のアプローチ方法が必要と考える.エネルギー源として糖の消費でなく,ケトン体を燃料とした新たな代謝エンジンを利用したKDが乳癌の治療に対し有用な補完的栄養療法となりうる可能性があると思われる.しかし実証されたエビデンスはほとんどないのが現状である1),11)~13).標準治療における乳癌の集学的治療においてKDがいかに寄与できるか,乳癌の特性,そしてその治療に関し解説し,KD療法の効果の可能性,課題につき紹介する.
  • 川口 美喜子
    2019 年 53 巻 5 号 p. 225-233
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー
  • 篠島 直樹, 前中 あおい, 牧野 敬史, 中村 英夫, 黒田 順一郎, 上田 郁美, 松田 智子, 岩崎田 鶴子, 三島 裕子, 猪原 淑 ...
    2019 年 53 巻 5 号 p. 235-242
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー
     【背景・目的】当院では難治性てんかんの患児に「ケトン食」を40年以上提供してきた.その経験に基づきIRB承認の下,悪性脳腫瘍患者を対象にケトン食の安全性,実行可能性,抗腫瘍効果について検討を行った.
     【対象・方法】2012年11月から2018年10月までの悪性脳腫瘍患者14例(成人10例,小児4例).栄養組成はエネルギー30~40kcal/kg/日,たんぱく質1.0g/kg/日,ケトン比3:1のケトン食を後療法中ないし緩和ケア中に開始し,自宅のほか転院先でもケトン食が継続できるよう支援を行った.
     【結果】ケトン食摂取期間の平均値は222.5日(5‐498日),空腹時血糖値および血中脂質値はケトン食摂取前後で著変なかった.有害事象は導入初期にgrade1の下痢が2例,脳脊髄放射線照射に起因するgrade 4の単球減少が1例でみられた他,特に重篤なものはなかった.後療法中に開始した10例中9例が中断(3例は病期進行,6例は食思不振など),緩和ケア中に開始した4例中3例は継続し,うち2例は経管投与でケトン食開始後1年以上生存した.
     【考察】後療法中にケトン食を併用しても重篤な有害事象はなく安全と考えられた.長期間ケトン食を継続できれば生存期間の延長が期待できる可能性が示唆された.中断の主な理由として味の問題が大きく,抗腫瘍効果の評価には長期間継続可能な美味しいケトン食の開発が必要と考えられた.
原著 (臨床研究)
  • 並川 努, 石田 信子, 津田 祥, 藤澤 和音, 宗景 絵里, 岩部 純, 宗景 匡哉, 上村 直, 前田 広道, 辻井 茂宏, 北川 博 ...
    2019 年 53 巻 5 号 p. 243-250
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー
    【目的】胃癌に対する化学療法時における炎症反応と栄養状態が予後予測に及ぼす影響を評価すること.【方法】2007年1月から2015年12月まで当科において化学療法を施行した治癒切除不能進行再発胃癌患者245例を対象とし,全生存期間をGlasgow prognostic score(GPS),好中球/リンパ球比(NLR)および予後推定栄養指数(PNI)を指標として検討した.【結果】全生存期間中央値(MST)は11.7カ月で,NLR<3.9群はNLR≧3.9群に比してMSTが有意に延長されていた( P =0.004).PNI>36.1群はPNI≦36.1群に比してMSTが有意に延長されており( P =0.040),GPSおよびmGPSにおいて0群はGPS 1/2群に比してMSTが有意に延長されていたが(P=0.005, P =0.044).多変量解析でNLR(<3.9/≧3.9;ハザード比1.550;95%CI 1.125―2.394; P =0.005)と組織型(Intestinal/Diffuse;ハザード比1.457;95%CI 1.043―2.598; P =0.042)が有意な予後予測因子であった.【結論】NLRは治癒切除不能進行再発胃癌患者の化学療法時における予後予測マーカーとなり得る.
  • 山本 和義, 大森 健, 島 雅晴, 小菅 友里加, 柳本 喜智, 新野 直樹, 杉村 啓二郎, 宮田 博志, 大植 雅之, 矢野 雅彦
    2019 年 53 巻 5 号 p. 251-258
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー
    【目的】当院の胃癌手術パスを術後7日目から6日目退院に改訂すると同時に65歳以上の高齢者と胃全摘(TG)/噴門側胃切除(PG)症例に周術期リハビリテーション(リハ)を追加した.【方法】周術期リハは理学療法士により術前指導,術後1~3日目は歩行訓練,4日目以降はエルゴメーターを用いた低強度の運動を行った.2017年4~9月の症例を7日パス群(n=112),2017年10月~2018年3月を6日パス群(n=142)とし比較検討した.【結果】7日vs. 6日パスでCD分類≥Grade IIの術後合併症発生率は5.4 vs. 5.6% と変わらず,術後在院日数は7(6‐57)vs. 6(5‐42)日(p<0.0001)と有意に短縮した.退院後30日以内の予定しない再入院率は3.8 vs. 2.1%と増加しなかった.【考察および結論】逸脱リスクの高い高齢者とTG/PG症例に周術期リハを付加した胃癌術後6日目退院CPは安全に導入可能であった.
臨床経験
  • 桂 宜輝, 武田 裕, 大村 仁昭, 阪本 卓也, 村上 剛平, 内藤 敦, 賀川 義規, 益澤 徹, 竹野 淳, 村田 幸平
    2019 年 53 巻 5 号 p. 259-265
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー
     悪性腫瘍手術において術前の栄養状態が術後合併症や長期成績に関連するとの報告が散見される.肝細胞癌に対する腹腔鏡下肝切除283症例を対象にアルブミン(Alb),総リンパ球数,総コレステロール値から求めたCONUT(Controlling Nutrition Status)値を栄養指標とし,治療成績との関連を後ろ向きに検討した.栄養評価が正常の102症例(A群)と軽度・中等度・高度異常の161症例(B群)で比較すると,平均手術時間(A群/B群)は356.7/319.0分(p=0.0128),平均出血量は248.3/356.8 cc(p=0.3742),平均術後在院日数は11.8/16.2日(p=0.3137)であった.合併症では術後出血,胆汁漏,Surgical Site infection(SSI)のいずれも発症率に差はなかった(p=0.8455,p=0.8664,p=0.4122).1年/2年/3年無再発生存率はA群87.5%/70.9%/56.9%,B群72.6%/50.9%/41.1%であり,1年/2年/3年全生存率は,A群で96.4%/96.4%/88.7%,B群で90.1%/81.7%/73.5%であった(p=0.0058,p=0.0021).術前CONUT値による栄養状態不良症例に対する腹腔鏡下肝切除術の長期予後は不良であった.
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