外科と代謝・栄養
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特集「がんに対する糖質制限食治療の可能性」
乳癌治療への応用に向けて
田部井 功
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2019 年 53 巻 5 号 p. 217-224

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抄録

 乳癌の治療では集学的な全身治療がmultimodalに行われている.化学(抗癌剤)療法の有効性は,その奏功率はもとより副作用の軽減およびコントロールによる継続性は治療成功への重要なカギとなる.糖質制限食療法(Ketogenic Diet:以下KD)による補助療法は抗癌剤による副作用を軽減し,治療の完遂率を向上させたとする報告がある1).乳癌患者における危険リスク因子に肥満や高BMIが指摘されている2)~6).これはいわゆるcachexia状態を呈する食道癌や膵臓癌などの担癌体と栄養代謝病態が異なることを示唆し,異なる栄養管理療法の必要性を示すものと考える7)~10).ゆえに乳癌患者は従来のがん患者に対する補充的栄養療法とは違う別のアプローチ方法が必要と考える.エネルギー源として糖の消費でなく,ケトン体を燃料とした新たな代謝エンジンを利用したKDが乳癌の治療に対し有用な補完的栄養療法となりうる可能性があると思われる.しかし実証されたエビデンスはほとんどないのが現状である1),11)~13).標準治療における乳癌の集学的治療においてKDがいかに寄与できるか,乳癌の特性,そしてその治療に関し解説し,KD療法の効果の可能性,課題につき紹介する.

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© 2019 日本外科代謝栄養学会
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