外科と代謝・栄養
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特集「手術侵襲と臓器不全」
術後重症心不全に対する補助人工心臓の現状
志賀 卓弥
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2021 年 55 巻 1 号 p. 34-43

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抄録

 術後重症心不全は, 心原性ショックにより生じることが多い. 周術期に重症心不全が生じれば, 手術対象臓器のみならず, その他の臓器不全も惹起し, 多臓器不全に陥る可能性がある. すみやかに薬物治療介入を行い, 臓器血流を改善する必要がある. 薬物による心原性ショックの治療を行い, 十分に臓器血流を維持できなければ, 機械的補助循環を導入する. 心原性ショックに使用できる機械的補助循環には, 大動脈内バルーンポンプ, 膜型人工肺, 経皮的補助人工心臓があり, それぞれ特徴がある. 特に経皮的補助人工心臓Impella®は, 近年導入された経皮的に挿入可能なユニークなデバイスである. 薬物治療抵抗性心原性ショックに対する機械的補助循環の適応アルゴリズムなどを活用し, 大動脈内バルーンポンプの導入と経皮的冠動脈形成術の必要性がないか検索を進める. 循環の改善が認められなければ, Impella®の導入を検討し, これでも不十分な場合は膜型人工肺へエスカレーションする. それぞれの機器の特性を理解し, 適応に応じて使用することで, 術後重症心不全患者のアウトカムの向上をめざす.

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© 2021 日本外科代謝栄養学会
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