外科と代謝・栄養
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原著 (臨床研究)
在宅中心静脈栄養患者における院内セレン製剤の投与量についての検討
田附 裕子米山 千寿塚田 遼當山 千巌東堂 まりえ岩崎 駿出口 幸一阪 龍太上野 豪久和佐 勝史奥山 宏臣
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2021 年 55 巻 2 号 p. 100-106

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抄録

 われわれは, 2019年の市販セレン製剤の販売まで, 低セレン血症を認める在宅中心静脈栄養(HPN)患者に対して院内調剤のセレン注射剤(セレン製剤)の提供を行ってきたので, その投与量と安全性について報告する. 対象および方法 : 2019年末においてセレン製剤を6カ月以上当科で継続処方している27名のHPN患者を対象とし, セレン製剤の使用量, 使用期間, 血清セレン値の変動, 有害事象の有無などを後方視的に検討した. 結果 : 患者の年齢は2~78歳(中央値22歳)で, うち16歳以上は17例であった. 基礎疾患の内訳では短腸症が13例と最も多かった. 血中セレン値をモニタリングしながら正常値を目指して投与した. 最終的に1日のセレン投与量は, 市販製剤の推奨(2μg/kg/日)より多く, 25~200μg/dL/日(4μg/kg/日)で, 血清セレン値(正常値:13‐20μg/dl)は8.3‐23μg/dL(中央値14.8μg/dL)で調整された. 血清セレン値に変動はあるが有害事象は認めなかった. まとめ : HPN患者におけるセレン製剤の必要量は市販製剤の推奨量より多く, また長期投与が必要であった. 市販セレン製剤の販売によりセレン製剤の供給は安定したが, 長期投与の症例では今後も血清セレン値を定期的に確認し, セレン製剤の投与量の調整が必須と思われる.

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© 2021 日本外科代謝栄養学会
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