外科と代謝・栄養
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特集「災害下におけるNST 活動」
熊本地震NST活動報告:避難所における食の問題~療養施設と対比して
小谷 穣治山田 勇上田 敬博
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2022 年 56 巻 1 号 p. 20-25

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抄録

目的: 地震発生から約2週間目に避難者の差し入れ内容, 消化器症状, 不満と希望を調査する. 方法: 対象は避難所 (34名) と老人療養施設 (12名). 主観的包括的栄養評価法でアンケートをとり, 同時に自由意見を聞く形で不満と希望を調査した.
結果: 体重の減少・不変・増加・不明が, 避難所で4, 24, 6, 0, 施設で0, 8, 1, 3で, 避難所で変化が多かった. 食事量の減少・不変・減少が避難所で4, 22, 1, 施設で1, 10, 1と避難所で変化が多かった. 体重増加の理由として, 「残してはだめと思っている」, 「高カロリーものが多い」, 「お菓子やカップ麺をつい食べる」, などがあった. 消化器症状は避難所で便秘が5で最も多く, 施設では多彩である. 施設の便秘は炭水化物過多の食材が関連していると思われた. 満足度は避難所で満足が2人のみで, 大多数が不満を訴えた. 不満内容は「朝のパンがいや (ご飯がいい), 甘すぎる, ひもじい」, 「おにぎりが大きすぎる」が最多だが, 床上で摂食すると腹部圧迫され食欲が落ちる (椅子とテーブルで食べたい) など, 床上生活での摂食環境への不満もあった. 施設では大多数が不満なしである. 希望は避難所で全員が述べ, 野菜, 朝にご飯, 肉, 果物, 炭酸飲料 (冷蔵庫がないので不可), アイスクリーム (同) など多彩である. また, 「食材を自分で選択したい」, 「自動販売機がほしい (自分で選択したい) 」など, 一方的に食事が与えられ, 選択権がない状況に飽きているという意見が聞かれた. 施設では希望はほぼなく,大多数が現状に満足していた.食材の供給源は,避難所がボランティアと自衛隊で避難者のニーズとずれていたが, 施設では遠隔地の老人療養施設で被災者のニーズを鑑みた食料が送られていた. 結語: 避難者は発災直後には差し入れに感謝するが徐々に不満となる. 食事は避難所での楽しみの一つであり, 精神的ストレスの軽減に重要である. 避難所には避難者のニーズを考慮した差し入れを行うべきである.

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© 2022 日本外科代謝栄養学会
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