外科と代謝・栄養
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総説
敗血症後症候群および精神障害の病態形成と回復過程における脳内T細胞の役割
齋藤 雅史藤浪 好寿大野 雄康山下 公大井上 茂亮小谷 穣治
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2022 年 56 巻 4 号 p. 155-159

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抄録

 現代の敗血症治療の焦点は, 患者の救命から長期予後の改善へとシフトしている. 退院後の敗血症患者では, 敗血症後症候群と呼ばれる重篤な精神, 認知, 運動機能障害が認められ, 社会復帰の妨げとなっている. その改善は急務であるものの, いまだ原因は不明である. 近年, 感染症に伴う脳内炎症が精神障害や認知機能の低下を招く一因となることが示された. 敗血症では, 敗血症性脳症と呼ばれる中枢神経障害が多くの患者に認められる. マウスモデルでは, 敗血症性脳症が敗血症後症候群の発症に関与することが直接的に示されており, 脳での炎症や免疫細胞の動態が病態形成において重要であることが示されている. われわれは, 敗血症後症候群のうちの精神障害の発症と回復におけるT細胞に着目して研究を進めてきた. 本稿では, 敗血症性脳症および敗血症後症候群の発症と回復におけるT細胞を中心に免疫細胞の動態を示し, 敗血症患者の長期予後改善へのヒントを探りたい.

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© 日本外科代謝栄養学会
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