外科と代謝・栄養
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ESSENSE ミニシンポジウム
腹部大動脈瘤に対してのERAS プロトコル15年施行から得られた成果は?
立石 渉早田 隆司大井 篤史小西 康信阿部 知伸
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2023 年 57 巻 3 号 p. 65-

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抄録

我々は2008 年よりERAS プログラムを腹部大動脈瘤開腹手術に対しての運用を行ってきた。外科代謝栄養学会より提 唱されたESSENSE の考えを組みこみ、患者満足度が得られる管理を念頭におきrevised を繰り返した結果、現在の ERAS 管理が完成したと考えている。まず早期結果としての早期離床・早期食事開始・早期退院の結果はConventional な症例と比べ有意に達成している。管理に対してのスタッフの理解、患者に対する、入院後の管理に対してのインフォー ムドコンセントを十分におこなう事で、治療に関わる全ての人のERAS に対する理解が当初より深まったことから、ほ ぼ同じような経過で管理することができておりEducation の観点では完成しつつある。患者の術後回復意欲を促進する 面で、􄻏痛コントロールと嘔気予防の検討は、極めて重要であると考えている。いずれも、術後の患者の不快に感じる 自覚症状であり、回避が回復に直結する。􄻏痛回避の投薬・動き方・説明などについては現在も検討中である。嘔気予 防はオンダンセトロンの使用が始まりさらなる改善が望まれる。最近は遠隔期の評価項目として、筋肉量減少の指標と なるpsoas muscle mass index(PMI)についても検討を続けている。現状の課題はPrehabilitation である。海外の報告 では術後の異化亢進やfraility が術後のアウトカムに悪い影響を及ぼすことから、タンパク負荷とフィジカルトレーニ ングを組み合わせる管理が行われているが、我々はマンパワーの問題から行えていない。今回は15 年における我々の ERAS の変遷と結果、現時点での問題点を提示する。

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© 2023 日本外科代謝栄養学会
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