外科と代謝・栄養
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ESSENSE ミニシンポジウム
呼吸器外科領域におけるESSENSE による周術期管理
郡 隆之細井 信宏鹿野 颯太熊倉 裕二小林 克巳
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2023 年 57 巻 3 号 p. 66-

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抄録

Enhanced recovery after surgery(ERAS)プログラムは、手術後の回復を促進することを目的としており、術前から術 後に至るまで患者の身体的・心理的側面を最適化するための一連のプロトコルを提供している。日本外科代謝栄養学会 ではEssential Strategy for Early Normalization after Surgery with patient’s Excellent satisfaction の略称をESSENSE と名付け、早期回復を目的としたプロジェクトを立ち上げている。日本版ERAS プログラムともいえるESSENSE は、 安全性を向上させつつ、患者の回復を促進する戦略を提供することを目的としており、その構成要素は、1)生体侵襲反 応の軽減、2)身体活動性の早期自立、3)栄養摂取の早期自立、4)周術期不安軽減と回復意欲の励起の4 点である。呼 吸器外科手術は近年video-assisted thoracoscopic surgery(VATS)が主流となっているが、その術式にはHybrid VATS、Complete VATS、Uniport VATS があり、robot-assisted thoracoscopic surgery(RATS)も2018 年に保険収載 され、現在本邦では多くの術式が行われている。また、術後􄻏痛コントロールの麻酔方法も従来の胸部硬膜外麻酔やintravenous patient controlled analgesia(IV-PCA)に加えて、傍脊椎ブロック、肋間神経ブロック、前鋸筋平面ブロック などの局所鎮痛法や、リドカイン術中静脈内投与法が開発されている。呼吸器外科領域のERAS プログラムの報告はま だ少ないが、Greg らの2019 年の報告では、肺切除術に対するERAS プログラムは再入院に変化を与えることなく、入 院期間の短縮、術後合併症の低下、オピオイド使用量の減少、医療費の削減効果を示しているが、既述のように近年術 式や􄻏痛管理法が乱立している状況で、最適な周術期管理法は定まっていないのが現状である。本セッションでは呼吸 器外科領域におけるESSENSE による周術期管理について、現状の問題点や方向性について言及する。

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© 2023 日本外科代謝栄養学会
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