抄録
脱細胞化組織は, 生体組織から細胞成分を除去した三次元構造を有する細胞外マトリックス (Extracellular Matrices : ECM) であり, 種々の脱細胞化技術によって得られる. 脱細胞化組織は高い生体適合性を有し, かつ患者の体内で組織再構築が可能で, これらの特長を生かして再生医療のための基盤材料として研究・応用されている. 脱細胞化組織は原料の組織および調製法の違いによって, 得られる脱細胞化組織の構造, 力学的特性, 生物活性は異なる. これまでに循環器系材料, 整形外科系材料, 創傷治癒材料などとしてさまざまな脱細胞化組織が開発されている. しかし製品の多くは米国で展開されており, 日本での開発・応用は後れている. 本稿では, 脱細胞化生体組織の背景, 調製法, 特徴および今後の動向について解説した.