フレイル (Frailty) は健康な状態と要介護状態の中間に位置し, 身体および認知機能の低下が見られる状態を指す. 癌領域においてフレイルは高率に発生し, せん妄や感染をはじめとする術後合併症, ならびに生存期間の短縮, 施設退院, 再入院に影響することが報告されている. 本検討では, 消化器癌に対し外科療法を施行された症例を対象に, フレイルの発生頻度, 手術成績を調査することを目的に検討を実施した. 2021年7月から9月に大阪国際がんセンターにおいて6分間歩行距離などの術前身体機能評価を実施した201例を対象に, 2020年改訂日本版CHS基準 (J‐CHS) を用い, フレイルの発生頻度と術後成績を調査した. 結果, 201症例のうち, フレイルは27例 (13%) , プレフレイル126例 (63%) であった. うち, 高齢者ではフレイル症例が22例 (81%) であり, プレフレイル/ロバスト症例と比較し有意に高率であった (p=0.004) . 在院日数はフレイル症例で17 (5‐98) 日であり, ロバスト症例と比較し有意に延長した. (p<0.001). また, 術後合併症はフレイルで13例 (48%) , プレフレイルで36例 (29%) , ロバストで6例 (13%) であり, 多変量解析の結果フレイルは術後合併症発症の独立したリスク因子であった. 以上のことより, 消化器癌領域では高齢症例でフレイルは高率に発生し, 在院日数の延長, 術後合併症の発症に影響を及ぼすことが示唆された.
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