2023 年 57 巻 4 号 p. 88-94
肝臓には, 特定の成熟期にあるnatural killer(NK)細胞が局在し, 強力な抗腫瘍分子TNF‐related apoptosis inducing ligand (TRAIL) が誘導可能で, TRAIL受容体を高発現する中・低分化肝細胞癌 (HCC) に対し細胞死を誘導する. そこで, 肝移植時に摘出したドナー肝を体外灌流した排液からNK細胞を回収してin vitroでTRAIL誘導して術後に移入するNK細胞移入療法を考案し, 第Ⅰ相試験を広島大学と米国マイアミ大学で実施し, 安全性と容量依存の無再発率・生存率の改善を報告した. また, TRAIL遺伝子多型が, HCCの遠隔転移再発の危険因子になることを確認した. NK細胞が自己のHLAを認識するkiller immunoglobulin‐like receptor (KIR) を表出すると共に活性が強化される機構をlicenseと呼ぶ. KIR‐HLA遺伝子多型に起因する脆弱なlicense機構の保有患者では, HCCの再発リスクを負うことを解明した.