漢方薬は,中国で生まれた生薬をベースとした中医薬を,日本の気候風土や日本人の体質に合わせて17世紀江戸時代に独自に変化,発展を遂げた薬物である.漢方薬は,いにしえより蓄積された多くの経験知に基づき処方が行われてきたが,近年の科学の進歩に伴い,漢方薬の作用機序が科学的エビデンスをもって明らかになってきている.周術期の患者ならびに化学療法や放射線療法中および治療後のがんサバイバーは,治療による侵襲により体力の低下,加えて時には継続する身体の不調をきたす.
漢方薬六君子湯は,術後の食欲不振や嘔気・嘔吐の改善に有効であることが科学的根拠をもって証明されてきた.また大建中湯は,術後イレウスや便秘に奏効することが多くの基礎および臨床研究の積み重ねにより明らかになってきた.
今回は,漢方薬のなかでも特に科学的エビデンスが多く得られている六君子湯ならびに大建中湯に焦点を当て,これらの漢方薬が周術期および化学療法,放射線治療時およびその後の上部および下部消化管機能低下の改善に貢献していることを紹介し,併せて今後の漢方薬研究の展望を紹介する.