抄録
有機農業実践ほ場11か所とそれぞれの近隣慣行農法ほ場の土壌を調査,比較した。その結果,化学性について,有機農業実践ほ場は慣行農法ほ場に比べ全炭素,全窒素含量が多く CECも高かった。動物性有機物を施用しているほ場については塩基飽和度,可給態リン酸が高かった。また,交換性塩基の蓄積の特徴は施用有機物の成分の特徴を反映していた。物理性について,有機農業実践ほ場は耐水性団粒が発達しており,固相率が低く,保水力が大きく,塑性限界が高かった。生物性について,有機農業実践ほ場は土壌動物が著しく多く,炭酸ガス発生量も多かった。これらの調査結果から,有機物の連用により土壌生物性,物理性は良好に保たれるが,化学性については肥料成分の蓄積やアンバランスなどが起こり得ることが明らかになった。