農耕地土壌が本来もつ炭素吸収能を最大限に利用し,地球温暖化の防止に貢献しようとする試みが世界的に広がりを見せつつある。農耕地の土壌炭素量は,土壌や作物の管理法によって大きく変化する。とりわけ畑作農業では,耕起や施肥法,栽培する作物種,作物残さの管理など農地管理の選択肢が比較的豊富にあり,工夫の次第によって畑地土壌は大きな炭素の吸収源となる可能性を秘めている。わが国においても,畑地を含む農耕地土壌全体にどれだけの炭素吸収能があるのか,どのような農地管理が有効であるのかということに関心が集められるようになった。そこで,北海道•十勝地域の黒ボク土輪作畑において,省耕起,堆肥の施用,作物残さ還元などの農地管理技術の適用が土壌炭素量に及ぼす影響を調査した。収穫後にプラウ耕起を行い,作物残さを土壌にすき込むこの地域の一般的な管理体系において,土壌炭素量は急激に減少していた。作物残さを圃場から持ち出すことは土壌炭素量の減少をさらに大きくした一方で,麦わら入り牛ふん堆肥の施用は,土壌炭素の減少を小さくした。また,プラウ耕起を行わない省耕起の適用は,土壌炭素の減少を小さくする効果があった。北海道の畑土壌においても,堆肥や作物残さによる炭素の供給と耕起の軽減による土壌有機物の分解抑制が土壌炭素の蓄積あるいは保全に有効であることが明らかにされた。
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