土壌の物理性
Online ISSN : 2435-2497
Print ISSN : 0387-6012
ソーダ質土壌の侵食防止における電解質処理を併用した粉末状高分子凝集剤利用の効果
山本 太平志村 豊西村 拓アンドリ へニントソア森谷 滋宙アルブサイディ アーメッド
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2008 年 110 巻 p. 53-66

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抄録

近年,高分子凝集剤(PAM)は,塩類土壌及びソーダ質土壌における土壌流亡を抑制させる改良材として用いられている。しかしながらPAMと電解質の併用による人エソーダ質土壌を用い,土壌流亡の抑制効果について検討した研究は,今まであまり行われていない。ここでは,人エソーダ質土壌において,PAMによる改良と石膏添加の有無が,塩水降雨によって生じる土壌流亡に及ぼす抑制効果を検討した。最初に,埴壌土に数種の塩溶液を加えて処理し,3種類の交換性Na率QESP)を有する供試土壌(ESPが0.5,9.9, 25.5%)を作製した。供試土は風乾して土壌槽に充填した。粉状PAMと石膏及びこれらの混合物の3種はそれぞれ,塩処理を施した土壌に添加した。この土壌槽に降雨シミュレータ装置を用い,強度 40 mmh-1の降雨を与えた。降雨には数種類の電気伝導度(ECが0.13,1,2, 5, SdSm—1) を有する塩水を用いた。実験の結果,人エソーダ質土壌はPAM添加によって,自然のソーダ質土壌と同様の流亡傾向を示した。清水を用いた降雨条件下では,土壌中におけるナトリウム割合の増加に従って,土壌流亡量が増加した。塩類溶液の土壌流亡に対する効果は,土壌のESPレベルよりも初期における土壌の電気伝導度によって影響を受ける傾向がみられた。PAM添加は表面流出水量をいくらか増加させたが,土壌の損失量が抑制された。またPAMで改良した土壌では,石膏の添加または塩水を用いた降雨条件下において表面流出水量が減少した。しかしながら,PAMと石膏または塩を混合した場合,降雨の衝撃によって土壌剥離が増加する傾向が見られた。

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© 2008 土壌物理学会
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