土壌の物理性
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古典を読む Geostatistics を先取りした土壌科学者 — Richard Webster による 土壌の理化学性のばらつきに関する三つの論文—
原口 暢朗
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2009 年 113 巻 p. 43-51

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抄録
土壌の理化学性の場所によるばらつきは,現在でもなお研究者を悩ます問題である.この問題に対する新たな確率 · 統計学的手法である地球統計学(geostatistics)は,1980 年代初めに土壌科学分野に導入された.この手法が提示した「空間的相関」の概念とこれを用いた未調査地点における性質の推定(内挿)法(クリギング,kriging)は,当時の多くの科学者にとって目新しい方法論であり,この手法に関連する数多くの論文が,土壌科学 · 水文科学分野で公表された.新手法は,諸分野における研究の新たな展開への期待感を持って迎えられた.一方,このような動向に先立ち,土壌学者の Webster は,土壌調査分類手法に数理統計学的な合理性を持ち込むべく,土壌のばらつきに対する多角的なアプローチを通じ,土壌における空間的相関の存在を独自に突き止めていた.彼にとって,地球統計学は自身の研究の延長線上に登場した手法であった.彼はクリギングを用いた図化手法の優秀性をいち早く認め,土壌科学におけるこの手法の適用に関する多くの論文を公表し,ペドメトリクス(Pedometrics)という新たな研究領域の創出に貢献した.
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© 2009 土壌物理学会
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