抄録
北海道の畑地で実施している各種基盤整備事業(農業農村整備事業)のうち,有機質資材を用いたオホーツク地域での土壌改良と,疎水材に木質系チップ(カラマツチップ)を用いた上川地域での排水改良の事例について解説した.オホーツク地域の土壌改良では,まず保水性改善のために火山灰を客土し,次いで客土による作土層の腐植含有率低下を補うため,有機質資材(牛糞堆肥)を投入した.施工後の作土層の腐植含有率目標値を 5 %とすると,計算上は大量(190 ~ 350 t ha‒1)の堆肥施用が必要となった.しかし,実際には作物生育と環境負荷への影響を考慮して,一律 40 tha‒1 の施用にとどめており,腐植含有率目標値の見直し等の課題が残されている.一方,上川地域の排水改良では,疎水材にカラマツチップを利用すると,工事実施に伴い二酸化炭素として排出される量の約 20 倍の炭素を畑地下層土に貯留可能と試算され,地球温暖化緩和策として有効である.