2016 年 133 巻 p. 19-27
多点土壌水分測定法として,フィールドルータ(FR)を用いた土壌水分センサネットシステムが注目されている.FR は,消費電力が少なく,携帯電話回線を使って安定稼働し,多様な機器 · センサに接続できる.本研究では群馬県嬬恋村キャベツ圃場で FR センサネットシステムの実証試験を行い,その有効性を検討した.2009 – 2010 年の冬季に,圃場内に FR,データロガーを 8 カ所,土壌水分センサを 30カ所に設置し,土壌水分を測定した.その結果 FR を用いたセンサネットシステムにより,凍結と融解によって体積含水率が激しく変化する様子が確認できた.また,凍結融解速度の違いによって小規模圃場内においても体積含水率のばらつきが生じることが把握できた.FR を用いたセンサネットシステムでは,乾電池の不安定な電力供給に起因したデータロガー由来の欠測とネットワークアダプタの機能停止に由来する欠測が見られたが,土壌水分量測定では 86 % のデータを回収でき,システムの有効性をある程度実証できた.本研究の結果を基に FR の改良が進められており,圃場の精密水分管理に向けた利用が期待される.