抄録
講座 3 回目となる今回は,吸着現象の最後として,協同吸着 · 多層吸着 · 選択係数を取り上げる.前回は吸着分子の間に相互作用が無い,個々の吸着サイトが独立した場合について述べたが,今回は始めに吸着分子の間に引力が働く場合について述べる.吸着分子の間に引力が働くと,吸着の進行が促進されることになる.特に,多数の分子が集合して吸着する場合を協同吸着と言い,ある濃度になると急激に吸着が進行する.このような吸着反応を表現する吸着式として,ヒルの式,Zhu and Gu の式,横相互作用のモデルを紹介する.多層吸着は,固体表面へのガスの吸着や溶液中の固体上への表面沈殿に見られる.多層吸着には BET 吸着式が良く利用される.選択係数は,競合する 2 種類のイオンの土壌への吸着力の相違を見たり,吸着量を推定する際に用いられる.