抄録
本稿では,地表面から鉛直下方へのコーン貫入抵抗(VPR)の農地土壌における活用方法や課題に注目し,VPRは土性やかさ密度の変化を伴う層界・部位をある範囲内で広域評価するには有効だが普遍的な基準値等は設定困難であること,VPRの面的分布は基本的に土壌断面調査等で得られる点の知見を面に広げるツールであること,根の生育を対象とした土壌物理性診断では最小制限水分域(LLWR)等,根伸長に対する機械的阻害だけでなく有効水分域の体積含水率や通気性も考慮した総合的評価手法の中にVPRを位置づけるべきことを指摘した.不均一性は土壌の本質であり,土壌マトリクスの物理性が根生育にとって不良の場合は,収縮亀裂や根成孔隙等の粗大間隙を積極的に活用する物理性改善が有効である.LLWRから見て日本の農地土壌では耕盤層以深の通気性改善が最も必要であり,下層土まで貫通する粗大間隙構造を作物根により作出・維持可能な輪作体系が有効と考えられる.