抄録
コロイド粒子は汚染物質の輸送担体として働くことが知られており,土壌中のコロイド粒子の輸送特性を理解することは重要である.本研究では,多孔質体内のCa2+とNa+との陽イオン交換反応がコロイド粒子の輸送挙動に与える影響を明らかにすることを目的とした.模擬多孔質媒体として豊浦砂を,モデルコロイド粒子にカルボキシルラテックス粒子を用いて一次元カラム通水実験を行った.その結果,陽イオン交換量やコロイド粒子の粒径によらず,陽イオン交換反応進行中の沈着コロイド粒子の脱離・流出は見られなかった.沈着していたコロイド粒子は,陽イオン交換終了後,間隙水のイオン強度が低下すると脱離した.DLVO理論に基づく相互作用エネルギーの計算の結果,二次極小領域の存在が,陽イオン交換反応時におけるコロイド沈着に寄与することが示唆された.