抄録
メタンは重要な温室効果ガスである.好気的な土壌ではメタン吸収が起こると考えられているが,流域内の湿地土壌や樹木の幹表面からのメタン放出は,好気的土壌でのメタン吸収を相殺し,森林がメタン吸収源から放出源に転じる可能性がある.本稿では,森林におけるメタン動態の中でも特に理解が不足している幹からのメタン放出現象と,熱帯泥炭湿地林におけるメタン動態に焦点を当てて,現場でのフラックス観測結果をもとに,土壌の水分条件がいかにメタンフラックスの制御要因として重要であるか解説する.モデル化に向けては現場観測による現象の理解が欠かせない.最後にモデル化に向けて,渦相関法によるメタンフラックスの国際的なデータベースを活用した統合解析が,全球のメタン動態の理解に向けてどのように役立てられているのか解説する.