抄録
水田における放射性Csの吸収を抑制するためには,カリウム(K)の動態を把握し,信頼性の高い効率的なKの施肥技術を確立する必要がある.そこで,本研究では,水田土壌から交換性Kが溶脱する要因として浸透水の影響を調べるために,親指サイズの小型カラムを用いて,異なる陽イオン濃度や組成比を持つ流入水に対する水田土壌からのKの溶脱を調べた.カラム試験では,通水試験後の土壌の交換性Kの変動係数は約6 %であり,十分な再現性を有していた.異なる水質を持つ流入水の浸透により生じる交換性Kの平衡含量は,流入水のK+濃度と陽イオン構成比によって決定され,PAR(K吸着比)が,K溶脱の有効な指標となった.流入水中の各陽イオン濃度がKの溶脱に及ぼす影響は,二価のイオンで大きく,Naの影響は小さいことがわかった.